今の光

焦りが、ずいぶんとなくなった。
いつも、自分の目線の高さにあるものを無視して、上ばかり向いていた気がする。
怖くて。それらに目を留めてしまうと、先に進めなくなりそうで怖くて。自分がどこに立っているのか分からなかったから。
ずっと、先のために先のために、と思って時間を費やしてきた。
「先」には予め、何かしら立てられている目標みたいなものがあって。
それを見ていれば良いから、楽だった。「今」は機械的な努力を積み重ねればよかった。


でもそれじゃ、自分で自分を形作ることができないって気づいた。あの、奈良の白木蓮
頑なに瞑っていた目を、そっと、力を緩めて開いてみる。
「今」っていうのは、素晴らしいものだった。
両手いっぱいに広げても、抱えきれずに零してしまうくらい。
鮮やかだったり、柔らかだったりする光に溢れている。
これが、怖かった。私の感受性には、つよすぎる。
でも、少しずつ、恐る恐るでも、味わっていけたら。


今日も、好きな人と過ごす時間を自分自身で過ごせて、あぁ、こういうことなんだ、ってじんときた。
当たり前のことができていなかった。他のところを向いていた。後悔したり、焦ったり。
この気持ちをずっと味わっていたくて、離したくなくて、どうしたらいいかわからなくなった。
この気持ちを、抱きしめて眠りにつこう。
明日は、明日の「今」を味わおう。
こうやって、私は私を形作っていく。